あなたとアートをつなぐ、名古屋の画廊 松徳

安曇野ジャンセン美術館を訪れて

2014/09/10

この夏休みを利用して藤田嗣治作品を多数所有する 秋田県立美術館 へ向かうにあたり、車での移動となったため道中に「安曇野ジャンセン美術館」を訪れることができました。

蜀咏悄-2014-08-07-10-38-06-1 

【 安曇野ジャンセン美術館エントランス 】

 

現在、当画廊ではジャン・ジャンセンの作品の取り扱いに力を入れているのもありますが、個人的に好きな画家の一人であり世界で初めてつくられたジャンセン専門美術館でもあるので、以前からぜひ訪れてみたかったため良い機会になりました。

手短ではありますが、実際に作品を目にして感じたことなどを綴っていきますので皆様にもよりジャンセンの魅力を感じて頂けたら幸いです。

 

カーナビの案内に従って美術館を目指し車を走らせるも、大通りからはそれらしい建物は見えません。本当にこの道で合っているのか、と半ば不安になりながら車を駐車場に停め、木々の生い茂る森の中へと進んでいくと、レンガ造りに三角屋根の可愛らしい建物があらわれました。中から出てくる人達が「ジャンセン良かったね、素敵だったね」と話しているのを聞いて、ここで間違いないと安心しながら建物の中へと足を踏み入れました。

安曇野ジャンセン美術館に続く道 蜀咏悄 2014-08-07 10 37 58 

【 左:安曇野ジャンセン美術館へ続く道  右:美術館外観 】

 

扉をくぐると正面にメインの展示室があるのですが、その入り口前にバレリーナの油彩画 「白いバレリーナ」 が飾ってありました。これは毎年夏休みに開催されている「プチ・ダンサー」というイベント用のもので、小さな女の子を対象にバレリーナの衣装を着て作品と共に写真撮影をするのだそうです。個人的にジャンセンの作品の中でも特にバレリーナの作品が好きなので、バレリーナを油彩で描いたこの作品を観てとても感動し、それだけでも来館した価値があったと思うほどに満足しました。

 

052 049 033

【 左:バレリーナ② 中:バレリーナ④ 右:バレリーナ① 】

※安曇野ジャンセン美術館内では写真撮影が禁止されていた為、現在、当画廊で取り扱っているジャンセンの作品の一部をご紹介します。ご興味のおありの方はネット通販ページhttp://www.shou-toku.co.jp/?post_type=item&s=%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%B3&x=0&y=0をご覧下さい。

 

展示室はメインの第2展示室、第1展示室が油彩画、2階の第3展示室が版画やデッサンと分けられていて、これまで馴染みのあった版画作品よりも油彩画が多く展示されており、まずその点に興味を惹かれました。何より、版画と油彩とでは印象が随分違うように感じました.特に第2展示室には500号を中心とする大作が並んでおり、人物・風景・静物とモチーフは様々ながら全てに共通してどこか暗く重々しい空気を感じます。当画廊で扱っているような版画作品も決して明るいとは言えず、繊細な筆致と淡い色使いが物憂げな印象を与えますが、油彩になると筆遣いの繊細さはそのままに色合いの重なりが深みを増し、蹲るバレリーナなどの人物画からは影でみせるような苦悩を、風景画からは日射しの明るさよりも暗雲がたれ込むような陰鬱さを感じさせ、人が生きていく上での苦しみや悲しみといった深く暗い心の闇を写し出しているようでした。

 

177 176

【 作品名:不詳 】

※安曇野ジャンセン美術館内では写真撮影が禁止されていた為、現在、当画廊で取り扱っているジャンセンの作品の一部をご紹介します。ご興味のおありの方はネット通販ページhttp://www.shou-toku.co.jp/?post_type=item&s=%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%B3&x=0&y=0をご覧下さい。

 

それは、ジャンセンの功績を広く知らしめた「アルメニア大虐殺展」で描き出しているように歴史に翻弄され続けた祖国への想いや、幼少期から常に戦禍を身近に感じながら過ごしてきた彼の人生観に由来するものなのでしょう。入館チケットに書かれている「私は自分がみて素晴らしい、美しいと思ったものを表現したい たとえ他の人がそれを美しいと思わなくても」という言葉の持つ意味に想いを馳せながら作品を観ていると、ジャンセンは表面的な美しさではなくもっと内なるもの、この世があり人が生きていくという事の本質にある影の部分に強く共感を覚えながら筆を取っていたのだと感じさせられます。

 

安曇野ジャンセン美術館を訪れて油彩画を始めとする多数の作品を観たことで、今まで以上にジャンセンという画家の魅力を知ることができました。また、今回の旅は「藤田嗣治の足跡を追う旅」の道中ということもあり、その作風が戦争に強く影響を受けたジャンセンと、戦争によって祖国を離れモチーフも猫や少女、子供といった「純真なもの」へと変化していった藤田嗣治と、共に「戦争」というキーワードでつながる画家の足跡を追う旅となったのは単なる偶然に過ぎないのか、8月ということもあり深く考えさせられました。

蜀咏悄 2014-08-07 11 07 57

【8月の安曇野】

( 語り手・松橋惠子/編著・山内奈良/レイアウトデザイン・大矢まほ )