武部雅子は1960年(昭和35年)に神奈川県で生まれた日本画家である。1990年(平成2年)に東京藝術大学絵画科日本画専攻を卒業、1992年(平成4年)に再興第77回院展にて初入賞を果たす。1995年には同大学大学院博士課程を満期修了と共に非常勤講師となり、同年に第50回春の院展でも初入選し翌年には日本美術院院友に推挙される。以降、院展に出品を重ねる。
ほぼ全ての作品が女性をモチーフとしており、どこか憂いを帯びた少女の表情と複雑な色使い、大胆な構図による抽象性の高い作風は、古来の日本画の概念にとらわれない新たな表現であるが、確かなデッサン力によってその芸術性を高めている。
活動の場も院展のみに留まらず、1994年(平成6年)には第3回佐藤国際文化育英財団奨学生美術展に招待出品し同美術展買上、若手日本画家の作品発表の場として平山郁夫によって立ち上げられた「有芽の会」では1996年(平成8年)に日本更生保護理事長賞を受賞、翌年の同会では更生保護婦人連盟賞を受賞、更に翌年の1998年(平成10年)には「花と緑、自然を描く展」にて優秀賞受賞、同展買上となるなどその実力を認められている。院展(春の院展を含む)においても「窓に春」が春季展賞受賞、「移香」や「三日月」、「天泣」、「雨滴」などで奨励賞受賞を重ね、2012年(平成24年)には第67回春の院展にて「春の青」が春季展賞及び郁夫賞を受賞。同年、第5回東山魁夷記念日経日本画大賞展でも院展出展作「雨滴」が入選するなど、その実力を広く認められてきている画家の一人と言える。